Jewel Fish








世界の何処にいたって僕らは
星屑よりも小さくて
そして大きすぎる夢も見れる


GARNET CROW「Jewel Fish」(GARNET CROW「Last love song」GIZA,INC.)



 “トニートニー・チョッパー”・・・世界で一番偉大なヤブ医者が付けた名前。
 その名の通り“斧”のように聳え立つ雄姿を掲げて、彼は新たなる冒険への第一歩を踏み出した。

 ゴーイングメリー号に乗船して、初めての朝。チョッパーは一人、甲板へと降り立った。
 昨夜の騒ぎが嘘のように静かな朝。朝日はまだ、海から顔を出し始めたばかりだ。みんなはまだ、眠っているのだろうか。昨夜はあまり、眠れなかった。嬉しさと楽しさと、それからほんの少しの寂しさ切なさが混ざり合って、意味もなく早起きしてしまった。
 手すりの間から顔を覗かせると、チョッパーは海を見つめた。
 四角く切り取られた海は、その姿を変えることなく、ただそこに佇んでいる。夜には見えなかった海の全貌・・・それは、ここからではまだ見えない。
 海をもっとよく見てみようと、チョッパーは、桜の花びらの形をした両手を手すりにかけると、よじ登ろうとぐっと力を入れた。
 そのとき突然、体がふわりと舞い上がって、チョッパーは思わず「うわっ」と小さな悲鳴をあげた。
「よおっ、チョッパー」
 チョッパーを抱き上げたのは、ルフィだった。
 ルフィはチョッパーの体を軽々と持ち上げると、そのまま自分の肩に乗せる。
「どうだ?この方が、よく見える」
 チョッパーは、広くなった視界をぐるりと見渡した。
 そしてその途端、歓声を上げずにはいられなかった。
 海が見える。光あふれる、朝の海。どこまでも、絶えることなく、一面に青い世界が広がる。その真ん中に、ぽつんと浮かんでいる、ゴーイングメリー号。そして、ここにいる自分自身の、何てちっぽけな存在・・・。
 心の底から、何かが押し出されるように湧きあがってくるのを感じる。ぞくぞくするような、くすぐったいような・・・。これはきっと、好奇心。全てが弾け飛ぶような興奮と、感動。なんだか、叫びだしたい衝動に駆られた。
 偉大なる海の前では、感情を隠すことなど必要ない。チョッパーは、海に向かって大声で叫んだ。
「おれはトニートニー・チョッパー!よろしく!!」
 波が、緩やかに揺れる。日の光に優しく煌いて・・・、自分を受け入れてくれているように、彼には感じられた。
『お前はいつか海へ出ろよ!!お前の悩みなどいかに小せェことかよくわかる!!』
 いつかヒルルクが言った言葉を思い出して、ルフィの麦わら帽子に添えた手に力がこもる。それを感じて、ルフィは帽子の下で嬉しそうに笑った。
 朝日が昇りきった海を、魚の群れが跳ねていく。舞い上がる水しぶきが光に煌いて、まるで宝石のようだ。
「おい、見ろチョッパー!」
「おおっ、すげーっ!!」
 歓声を上げる二人の瞳は、冒険心で溢れている。
「美味そうだ!!」
「・・・えっ?」
「そう言えば腹減ったなー。サンジ、メシ!!」
 チョッパーを担いだまま、ルフィは甲板を駆け回る。
 もうすぐ、二人の叫び声に起こされた船員達が、甲板へとやって来るだろう。賑やかな朝が始まる。
 この偉大なる海の中に、ぽつんと浮かぶちっぽけな船は、今日も最高速度で、己の野望に向かって進んでいく。

秀汰さんより



イラスト 秀汰さん






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