Cheers!!








「なぁ、サンジ、ケーキ作ってくれ。俺ケーキ食いてぇ」
 それはいつもと何ら変わりない、ある朝のことだった。朝食に乗じて、船長のいつもの気紛れが始まる。
「我侭言うんじゃねぇよ。料理に関しては俺に任せて・・・」
 いつものように軽く流そうとするサンジ。そこへ、
「いいじゃねぇかたまには。俺も食いてぇな、ケーキ」
 ウソップがルフィに賛同。
「ケーキなんて甘いもん・・・んん!」
 言いかけたゾロの口を塞いで、ナミが言う。
「サンジくん、お・ね・が・い」
「はい!分かりましたナミさん!!」
 サンジ、即答。
 そう、それはいつもと何ら変わりない、ある朝の出来事。例えほんの少しいつもと様子が違っていたとしても、ハート型の煙をふかしているサンジには気づかれないほどの・・・。

阿呆聖人さんより


「どうだ?あいつの方は」
 キッチンから出てきたナミに、ウソップが声をかける。
「大丈夫、張り切ってケーキ作り始めたみたいだから」
 ナミがウソップにOKサインを送る。
「そっちはどう?作れそう?」
「任せとけって」
 今度はウソップがナミにサインを送る。
「さてと・・・」
 ナミは甲板を見回すと、寝転がっているゾロの元へ。
「ゾロ、あんたもやるのよ」
 そう言ってナミは、ゾロの前にどさりと紙の束を置いた。
「あ?なんだこりゃ」
 ゾロが面倒くさそうに起き上がる。ナミが、ゾロの前で実演してみせる。
「この紙を細長く切って、こうやって輪っかにして鎖みたいに繋いでいくのよ」
「そんな面倒くさいことできるか。俺は寝る」
 そう言って再び眠りかけたゾロに、ナミがぼそっと一言。
「この間のお酒代のことだけど・・・」
 ぴくりと反応するゾロ。
「確かあの時・・・」
 ナミが何か言う前に、ゾロが慌てて起き上がる。
「分かったよ、やりゃいいんだろ、やりゃ!」
「そういうこと」
 ナミがにっと笑う。
「あ、ルフィ、あんたもお願いね」
 ナミは船頭に座っているルフィにも声をかける。船頭からぴょんと飛び降りるルフィ。
「任せろ」
 ゾロ、嫌な予感。
「ちょっと待て、おまえも一緒にやるのか?」
「おう、よろしく!」
 二人を見届けて、すたすたと去っていくナミ。
「あ、おい。ナミ!」
 ゾロの叫びも無視してナミは一旦自分の部屋へ行くと、小さな机と、何やら食材を抱えて戻ってきた。
「私も始めるとしますか」
 こうして役割分担を終え、それぞれが自分の仕事を順調にこなしているように見えた。・・・が、しばらくの後。
「何でおまえはそうなるんだよ・・・」
 頭を抱えているのはお察しの通りゾロ。その視線の先には、なぜか床にぐさりと刺さっている紙切り用のナイフ。
「さぁ、何でだろうなぁ・・・」
 本気で頭の上にクエスチョンマークを浮かばせながら、ルフィがナイフを抜く。と、ルフィの手をすり抜けたナイフが、ゾロの顔すれすれのところを勢いよく飛んでいった。
「あ、わりぃわりぃ」
 持っていた紙を握りしめ、拳を震わせるゾロ。
「いいからおまえはあっち行ってろ!」
 ゾロの元を追い出されたルフィ。今度はナミの元へ。何やらおいしそうなものが並んでいる。ルフィはそのうちのひとつを取って・・・。
「お、うめぇ」
「ありがと。・・・って」
 ナミが振り返る。
「何つまみ食いしてんのよあんたは!!」
「おおっ」
 慌てて一歩下がろうとするルフィ。と。
「あー、ルフィ、そこ踏むなぁ!!」
 無意識のうちに出したウソップの手は、無残にもルフィの足の下・・・。
「ルフィ・・・」
 思いっきり涙目のウソップ。
「いいから邪魔だけはするな!!!」
 ついに、3人の怒りが爆発するのだった。
「いい、今からあんたはキッチンに行って、テーブルと椅子を取ってくるの。サンジくんには上手く誤魔化すのよ。分かった?」
「御意」
 すたすたとキッチンの方へ歩いていくルフィ。
「あいつに誤魔化すなんて芸当できんのか?」
 ちょうどその頃、キッチンでは。
「何やってんだあいつら。うるせぇな」
 一人、呟きながらケーキを作っているサンジ。
「ま、いつものことだが・・・」
 そう言いながら、ドアノブに手をかける。
「おい。おまえら何やって・・・」
かちゃりとドアを開けようとした・・・そのとき。
“ドン!!”
 ドアが何かにぶつかって、その向こうの光景を見ることは憚られた。そう、同じくドアを開けようとした、ゴム人間によって・・・。
「なんてタイミングの悪いやつ・・・」
 ウソップが呟く。
「というか、いいやつ・・・。いつもながら」
 ゾロも頭を抱える。
「なんだ?」
 猶もドアを開けようとしたサンジを、ナミが慌てて止める。
「あ、サンジくん、ケーキどう?」
「ナミさん、任せてください!必ずやナミさんのお気に召すものをお作りいたします!」
「ありがと、じゃ、お願いね」
「はい!」
 いそいそとキッチンへ戻っていくサンジ。一同、とりあえずほっと一息。
「あ、それからサンジくん。テーブルと椅子、ちょっと借りるわよ」
「どーぞどーぞナミさん!」
 もはやサンジの目にはナミしか映っていないらしい・・・。

 そんなこんなで、何時間か経った後。ついに、サンジ特製ケーキが完成した。
「うーん、我ながら上出来」
 サンジはケーキを左手に乗せると、勢いよくドアを開けた。
「出来たぞクソ野郎ども!と、ナミさーん!」
 とそのとき、
“パーン!!”
 大きな音がすると同時に、サンジの上に色とりどりの紙吹雪が降り注いだ。
「な、なんだ?」
「ハッピーバースデーサンジ!」
 いつの間にか、甲板は、パーティー会場と化していた。甲板の手すりはリングにして繋いだ紙で飾られ、真ん中にはキッチンから運び出されたテーブルが、きちんとレースのテーブルクロスをかけられて置いてある。呆然とするサンジに、ナミが声をかける。
「どう?驚いた?」
「・・・あ、ああ・・・」
「今のはウソップ特製即席クラッカーよ」
 ウソップが満足そうに腕組みをして頷く。
「それから、手すりの飾りつけはゾロ」
 ゾロは照れくさそうに頭を掻いている。ルフィが横から口を出す。
「あ、俺も俺も」
「てめぇは邪魔してただけだろ・・・」
「それから・・・」
 ナミは少しはにかみながらテーブルを指す。そこには、たくさんの料理が並べられている。
「これ、ナミさんが?」
「そ。キッチン使えなかったから、大したものは出来なかったけどね」
 今度は、ウソップがサンジの背中を押す。
「ま、ラブコックのこともちったぁ祝ってやろうっていう俺たちの粋な計らいだ。ありがたく思え」
 そうして、呆然としているサンジを椅子に座らせて自分たちもテーブルにつくと、サンジのバースデーパーティーが幕を開けた。
「乾杯!」
 5人の声が大空に響き渡る。
「うーん!ナミさんの手料理最高!」
 鼻を膨らませながら幸せに浸るサンジ。
「本当?よかったー」
 それを微笑みながら見つめているのはナミ。ルフィはそこら中の料理を片っ端から食べていて。
「うめぇ!」
「あ、ルフィてめぇ、それは俺の・・・」
「いいじゃねぇかゾロ。減るもんじゃないし」
「減ってるって・・・」
 デザート用によけてあるケーキを見て、サンジが訊ねる。
「けど何で祝われる当事者がケーキ作らなくちゃいけねぇんだよ」
「しょうがないだろ。他におまえを足止めする方法見つからなかったんだから」
 まだいくつか残っている、自分の作ったクラッカーを眺めてにやけながら答えたのはウソップ。
「そんなことどうでもいいよ。ケーキ食いたかったし。んじゃ、いただきまーす!・・・うげっ」
 ケーキを食べようとしたルフィにサンジの蹴り技炸裂!
「待てルフィ。俺の誕生日を祝ってくれんだろ?当然このケーキは俺のもんだ」
「なんでだよ、ケチー!!」
「もちろんナミさんには差し上げますよ」
 そう言ってサンジはケーキを丁寧に切ってナミの皿に載せる。
「ありがとサンジくん。うーん、おいしい!」
「ずりぃぞナミ!いただき!」
 サンジがナミに気を取られているうちに、丸ごとケーキを持っていったのはルフィ。
「あ、こらルフィ!」
「俺にもくれルフィ!」
 サンジとウソップがルフィに襲いかかる。
「ぐー・・・」
 そんなことはお構いなしに、いつの間にか眠っていたのはゾロ。

 いつもと何ら変わりない、ある一日は、こうして慌しく過ぎてゆくのだった・・・。


イラスト 阿呆聖人さん






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