海の歌声
|
|
「何してんだ?こんなとこで」 背後からの突然の声に、ナミは振り返った。 ゴーイングメリー号の甲板から、ナミは真夜中の海を見つめていた。果てしなく広がる海と、星々が瞬く果てしない空。その中に、船はぽつりと浮かんでいる。 「ゾロ?」 ・・・振り返った先にいたのは、月の光に照らされた、一人の剣士だった。 「あんたこそ、どうしたのよ、こんな夜中に」 ゾロは大きな欠伸をひとつすると、面倒くさそうに頭を掻きながら答える。 「ちょっと眠れなくてな」 「年がら年中どこででも寝られるあんたの言うセリフじゃないわね」 そう言って、ナミは悪戯っぽく笑う。 「・・・で?」 ゾロは、ナミの隣り・・・甲板の手すりにもたれかかると、もう一度大きな欠伸をした。 「アタシも同じ。眠れなくて外に出たんだけど・・・」 「けど?」 「海を見てたのよ。そしたらね、いろいろな音が聞こえるの。波の音や、風の音。昼間の賑やかな船の中で聞くのと全然違うの。澄み渡ってるっていうか。こんな音もあったんだって、なんだか心地よくなっちゃってね」 「そっか」 ゾロは、両肘で体を持ち上げるようにして立つと、一度伸びをした。 「邪魔したな」 「あ、待って」 そう言って部屋へ戻ろうとしたゾロの左手を掴んで、ナミが引き止める。 「あ?」 「まあいいじゃない、もう少しだけ。ホント言うとね、誰かに聞いてもらいたいと思ってたとこなのよ。この時間を独り占めするのが、勿体無い気がしてね」 「だったらあのラブコックとかの方がいいんじゃねぇのか?少なくとも俺よりは・・・」 「あんたがここに来たんだから、あんたでいいのよ。いいじゃない、少しくらい付き合ってくれたって」 「・・・ま、いいけどな」 ゾロは、手すりにもたれて寝転がった。 「要するに、誰でもいいってことか」 「そういう訳でもないわよ。同じ夢を持って、同じ船に乗ってるあんたたちじゃなきゃ、こんなこと話さないわよ」 そう言ったナミを、ゾロがまじまじと見つめる。 「なによ」 「いや、なんかおまえ、いつもと違うな」 「ん?」 「・・・ちゃんと女に見える」 「あのねぇ・・・」 ナミの言葉を無視して、ゾロは瞳を閉じた。 「もう・・・」 ナミはふっと溜め息をつくと、そのまま瞳を閉じる。風が、耳の横を通り抜けて、髪を揺らしていく。 「・・・聞こえる」 「え?」 突然のゾロの声に、ナミは振り返った。ゾロは、瞳を閉じたまま呟いた。 「海の歌声・・・だな・・・」 澄み切った空気に、その声はよく響いた。 「あら、なかなかロマンチックなこと言ってくれるじゃない」 ナミが、ゾロに向かって悪戯っぽく笑う。ゾロは、頬を少し赤く染めると・・・暗闇でよくわからなかったが・・・、大きないびきをかき始めた。 「ごまかしちゃって」 「・・・うるせぇ」 ゾロの呟く声に、ナミはもう一度小さく笑った。 ![]() 「いてっ!」 頭に何かがぶつかって、ゾロは目を覚ました。いつの間にか、太陽は高く昇っていた。 眠い目をこじ開けながら覗いた視線の先には、みかん畑から、こちらを見て笑うナミの姿があった。 「ナミ、てめぇ・・・」 と、目の前に、みかんがひとつ転がっていた。どうやら、頭にぶつかったのはこれらしい。不思議そうにみかんを手に取るゾロに向かって、ナミが言った。 「それ、昨日のお礼」 「・・・あぁ」 ゾロは、にっと笑ってみかんを太陽にかざしてみる。 「おい、ちょっと待て」 「あ?」 そこにお約束のように現れたのはサンジ。 「何でおまえがナミさんに・・・」 「おお、美味そうなみかん!」 そう言ってゾロの手からみかんを奪ったのはルフィで。 「あ、ルフィ、俺にもくれ、ナミさんの・・・」 「おい、それは俺の・・・」 そうこう言って揉みあっているうちに、実験中のウソップに激突。火薬が一気に爆発する。 「げほっ!何すんだおめぇら!」 甲板で騒ぐ男たちに、それをみかん畑から微笑ましく見守っていたナミが叫ぶ。 「みんなぁ!愛してるわよぉ」 男たちが一斉に振り返る。 「何言ってんだ突然」 「ナミさーん!!」 「ナミ、悪いが俺には・・・」 「おう、俺もだナミー!」 船は行く。夜中とは一転した、賑やかな海の歌声を聞きながら。同じ夢を抱いた仲間たちを乗せ、グランドラインへ・・・。 イラスト ステテコダンスさん
よろしければ感想をひとこと残していってくださいね。 古い作品でも大歓迎です。 |
| ホーム |