スポンサーサイトこたつでみかん








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 時計を見ると、もう午後3時を回っていた。
 今朝9時に事件の依頼で家を出てから6時間。
「・・・まあまあやな」
 一人呟きながら、平次は家路を急ぐ。コバルトグリーンのマフラーに包まって、バイクを走らせながら、「そういえば、バイク乗ってて、長いマフラー絡ませて窒息死した人がおった・・・」なんて考えて、平次はマフラーをもうひと巻きした。
 冷たい風を受けながら家に着いて、「帰ったでぇ」と呟きながら玄関の扉を開けて、靴を脱いで上がろうとしたとき、平次は「ん?」と一瞬立ち止まった。そこに、見慣れた靴がある。
 平次は迷う様子もなく、居間に通じるふすまを開けた。
「・・・なんでおまえがおんねん」
 こたつで丸まってテレビを見ていたのは、和葉だった。
「平次のおばちゃんが上がってって言うから」
 和葉はテレビを見つめたまま、答える。どこにでもありそうなワイドショー。女優のなんとかと脚本家の熱愛発覚とか、どうでもいいことを騒ぎ立てる。
「せやから、なんで家に来てんのかって訊いてんのや」
「遊びに来たったんやんか。そやのに平次いてへんから」
 和葉は当然のようにそう言うと、こたつに載っていたみかんを一つ取って、皮を剥き始めた。
「で、おかんは?」
「買い物」
 平次は少し溜め息をつくと、巻いていたマフラーを外してコートを脱ぐ。「さぶぅ」と呟いて、平次は和葉の隣りに潜り込んだ。
「事件やったんやろ?わりと早かったやん」
 そう言って、和葉はみかんを口に入れる。相変わらず、視線はテレビにある。
「まぁな、犯人、すんなり犯行認めたし」
「ふーん・・・」
 和葉は何となく視線を平次に移す。と、隣りでこちらを見ながら大口を開けている平次と目が合った。
「金魚かあんたは。自分で剥いてや」
 和葉はそう言いながらも、少し顔を赤らめてみかんを平次の口に放り込む。そのまま、和葉は視線をテレビに戻す。
「おおきに」
 平次は口をもごもごさせながらそう言って、自分もテレビの方を見た。さっきのニュースは終わっていて、今度はリフォーム計画だかなんだかをやっている。
 しばらく二人ともテレビを見つめていたが、やがて平次が呟いた。
「おもろいか?」
 和葉はしばらく考えて、ぽつりと答える。
「・・・わりと」
「そう」
 二人はまた、テレビを見ながらみかんを食べ始めた。
 平次は時々、和葉に視線を移してみる。それに気づいているのかいないのか、和葉はテレビから視線を外そうとはしなかった。
「なぁ、和葉」
「ん?何?」
 平次の呼びかけに、和葉がようやくこちらを向く。手には、本日七つ目のみかん。
「遊びに来たって言うたよなぁ。自分、何かやりたかったんとちゃうの?どっか行きたかったとか」
 平次は少し気になっていたことを、和葉に訊ねる。
「んー・・・そやね」
 はぐらかされたのか何なのか、和葉は気のない返事をした。それから、持っていたみかんを一つ、平次の口元に差し出す。平次は大口を開けてそれをもらうと、そのまま首を傾げた。
 しばらく和葉は黙っていたが、やがて、何かを思い出したように、平次の方を向く。
「・・・アタシ、平次と二人、こたつでテレビ見ながらみかん食べるの、嫌いやないで」
 和葉は平次を見つめたまま、そう言った。平次は、いっそう首を傾げる。
 意味のわかっていない平次に、和葉は「何でもないわ」と言うと、さっさと視線をそらした。
「鈍感男・・・」
 和葉は低い声で呟く。平次に聞こえないように。でも、聞こえてもいいかなくらいの期待を込めて。
「なんやねんおまえ。変なヤツ」
 聞こえているのかいないのか、平次はそう言うと、和葉が手を伸ばした八つ目のみかんを横から奪い取る。
「あーっ、何すんのぉ!」
「おまえ食べ過ぎや、アホ」
「ええやんか別にぃ」
 誰も見ていないテレビでは、いつの間にかドラマの再放送が始まっていた。





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まとめ
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