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「急な依頼が入っちゃってさ、今日も行けそうにないんだ」
『うん、大丈夫。また暇なときに誘ってくれる?』
 電話の向こうからは、いつもと同じ明るい声が聞こえてくる。
 コナンから新一に戻り、黒の組織が壊滅。・・・あれから2年、新一は、高校生探偵だったころ以上に多忙な日々を送っていた。今日も朝から電話は鳴りっ放しで、携帯電話からやっとかけた蘭への電話も、早々に切り上げなければならなかった。
 電話のベルに少しいらつきながらも、事件と聞けば足を運ばずにいられないところが探偵としての悲しい性分で・・・。蘭が落ち込んだり怒ったりしないことだけが新一の唯一の救いだった。

 夜遅く、事件を解決して、新一は家に帰ってきた。ジャケットを放り投げると、自分もソファに体を投げ出す。
 今日は難事件だったな。だけど、この工藤新一にかかればあんな事件・・・。
 思い返して、少し顔がにやける。
 ・・・蘭に電話してやらなきゃ。
 新一はソファから体を起こした。とそのとき、電話のベルが鳴り始めた。
「・・・もしもし?」
『新一?私だけど』
 グッドタイミング。
「おう、蘭か。俺も今電話しようと思ってたところなんだ」
『ホント?気ぃ合うわね』
 ふいに、言葉に訛りが混ざる。新一はピンときた。
「・・・お前、和葉だろ・・・」
『な、何言ってんのくど・・・新一』
 電話の向こうで慌てているのがわかりやすいほどわかる。
「・・・イントネーション違うんだよなー。何でばれないと思うかなー」
 コナンから新一に戻ったとき、「ネタに使えそう」などと言って喜び勇んで変声機を(半ば強引に)持っていった大阪二人組は、ときどき蘭や新一にこういったいたずら電話をかけてくる。但し、新一が忙しいことは知っているので、昼間には絶対にかけてこない(あまり夜遅くに電話してくるのも考えものだが・・・)。
『アタシもまだまだ修行が足らへんわ』
 電話の向こうから、和葉の声がする。
「だいたい蘭は仕事用の電話になんかかけてこないんだよ」
 言ってから新一は、ふと思う。
 そういえば最近、蘭から電話がかかってこない・・・。
 新一は、蘭と自分専用の携帯電話を取り出すと、着信履歴を見た。蘭からはかかってきていない。いつも、新一から蘭にかけるばかりだ。事件の話をしたり、デートの約束をしたり(最近は忙しくて約束もあまりできない)、仕事が入ってそれをキャンセルしたり・・・。
『工藤くん?聞いてんの?』
「あ・・・ああ、悪い」
 和葉の声に我に返る。
『まぁ、しゃあないわな。工藤くん、探偵業忙しいんやろ?疲れてるとこ電話してごめんな』
「あ、いや、全然そんなんじゃないから。それよりそっちはどうなんだよ。服部も忙しいんだろ?」
『平次なんて工藤くんに比べたら暇なもんやで。・・・あ、平次怒った?』
「そこに服部いる・・・」
 新一が言い終わらないうちに、電話の向こうから不機嫌な声が聞こえてきた。
『おい工藤、俺かてお前に負けんくらい忙しいんやからな。お前と肩並べる西の名探偵やぞ』
「はいはい・・・」
 こういうときは、下手に何か言わないほうがいい。「勝負や」とか言い出して振り回されるのがオチだからだ。
『和葉もいっつも事件現場についてきよるんや。もうこっちはかなわんわ』
「おいおい、仕事中にまで一緒にいるのかよ」
『俺が依頼入ったから行ってくるわ言うと、必ず“ほんならアタシも”って無理矢理』
 電話の向こうで、「だって平次放っとくと何やらかすかわからへんもん」と声が聞こえる。
『それに引き換え、お前んとこの姉ちゃんは素直でええ子やなぁ。いっつもちゃんと待っとってくれるんやろ?』
「あ、ああ・・・」
 そう、蘭はいつも、何も言わない。何も言わないから、安心してた。でも・・・。
“いっつもちゃんと待っとってくれるんやろ?”
 なぜだか引っかかる。俺は、蘭のこと、待たせてる・・・?
『おい、工藤?』
「あ・・・」
 また上の空になっていた。
『どないしたん?姉ちゃんとなんかあったんか?』
「いや・・・。それよりお前ら、なんだかんだ言ってのろけてんだろ」
『あ、わかる?』
「もう切るからな。明日も早いんだ」
『あ、工藤・・・?』
 平次が何か言う前に、新一は、ぶっきらぼうに電話を切った。しばらくそこに佇んで動けないまま、新一は考える。
“蘭に待ってて欲しいんだ”
 あれから、自分はこうして、新一として蘭の元へ戻ってきた。それで、約束を果たしたと思っていた。それなのにいつの間にかまた、蘭に淋しい思いをさせている?近くにいるから安心していた。もう離れることはないと。それなのに、いつの間にか心はこんなにも離れている・・・。
 最近ずっと、蘭に会ってない。
 そうだ、キャンセルするのはいつも自分で。待たせているのは、いつも、自分で・・・。
 新一の頭の中を、ひとつの想いがよぎった。
 蘭に会いたい。
 アイタイ・・・。
 新一は、携帯電話を握りしめる。そして、この携帯電話にひとつしか入っていないメモリ番号を押す。呼び出し音が鳴り始める。胸の鼓動が響く。呼び出し音に重なって、そして・・・。
『もしもし?』
「あ・・・」
 この声を聞くといつもほっとする。
『事件解決したのね。どうだった?今日は』
 いつものように明るく、蘭が訊ねる。その裏でいつも淋しい思いをさせていたことも知らずに、自分は事件の話ばかりしていた。
「あのさ、蘭・・・」
『・・・え?』
 新一のいつもと違う様子に気づいたのか、蘭の声に緊張が走ったように思えた。
「蘭、俺、自分のことしか考えてなかった。近くにいるから、安心してた。蘭に甘えてた」
『新一・・・』
 しばらくして、蘭は搾り出すように言った。
『・・・うん・・・、そう・・・、だね』
「蘭が心配かけないように明るくしてたことにも気づかなかった」
『・・・うん』
「もう、離れることはないはずだったのに、いつの間にかこんなにも離れてた」
『・・・うん・・・』
「だから・・・」
 新一はひとつ、大きく深呼吸すると言った。
「俺、今、すごく、・・・蘭に会いたいんだ」
 あたりが急に静かになったように思えた。新一は、ごくりと唾を飲み込む。
 やがて、電話の向こうから、蘭の優しい声が聞こえてきた。
『これで、最後にするから。もう、二度と言わないから』
 そして蘭は、ゆっくりと言った。
『待ってる』
 その途端、新一は、受話器を握りしめたまま家を飛び出した。そして、一直線に蘭の家へと向かう。通いなれた道が、やけに遠い。
 地面を蹴る足音と、胸の鼓動が響く。ただ、そんなものはどうでもよかった。蘭に会いたい。それだけ。
 四つ角を曲がると、蘭の姿が見えてきた。新一は懸命に走る。蘭もゆっくりと、こちらに向かって歩いてくる。蘭の前で、少し立ち止まる。そのまま一瞬だけ、二人は見つめ合った。
「蘭・・・」
 次の瞬間、新一は蘭を抱きしめていた。きっとずっと、待ち望んでいたはずの、その瞬間。
「待たせて、ごめん」
 もう二度と、待たせたりしない。
 そう言う代わりに、新一は蘭を一層強く抱きしめる。そして・・・。
「くどーおっ!」
 そして・・・?
 二人は思わず、声のする方へ振り返った。すると、
「服部?」
「それに、和葉ちゃん」
 そう、そこにいたのは、つい先程まで電話していたはずの大阪二人組。
「お前ら・・・、なんで?」
「さっき電話したときに東京来てるって言おう思てたのに工藤くんすぐ切ってしまうから」
「なんや上の空やったから心配して急いで来てみれば、こういうことかいな」
 平次がにやりと笑う。
 ・・・わかってんなら邪魔するんじゃねぇよ。
 新一は心の中で舌打ちする。
「ほんなら酒買うてきたから、みんなで酒盛りしようや」
 そう言ってさっさと蘭の家に上がりこもうとする大阪二人組。
「おい、お前ら勝手に・・・」
 二人に背中を押され、強引に家の中へ連れ込まれてしまう新一と蘭。

 二人だけで過ごす時間は、まだまだ訪れそうにないのだった・・・。





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