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 ここ数年間、クリスマスにはこれと言った思い出がありません。って言っても、予定がないわけではなかったんです。友達から毎年、クリスマスパーティーやらない?と誘いがかかるから。
 だけど私は、いつもこう答えます。「ごめんな。その日、別の予定が入ってんのや」。
 私は、そんな自分をつくづくアホだと思ってしまいます。だって、ホントは予定なんて何もないんだもの。ひとり、自分の部屋でボーッとしてるだけ。
 それというのも、全部、私の隣にいるこの男が悪いのです。いかにもって感じで教科書を机の上に立てて、そのくせいびきなんかかきながら眠ってるこの男、こいつが全部悪い!
 彼の名は服部平次。私の幼なじみ。関西ではちょっとは名の知れた高校生探偵なんだけど、思い立ったら東京でも何処でもすぐに行っちゃうし、銃で撃たれるし海には落ちるし、事件解決のためには健全な女子高生(もちろん私のことである)の服脱がせようとまで・・・。
 ・・・と、それはいいとして、クリスマスに思い出がないのは、私の頭の中にしがみついて離れない、変な期待のせいなのです。
 たしか、中学1年生の時のクリスマスイヴ。その時はホントに何も予定がなくて、ひとりでテレビを見てました。その時突然玄関のベルが鳴って、入ってきたのが平次だったのです。「和葉、一緒にクリスマスパーティーやらへん?」って。
 平次は、両手で大きな箱を抱えていました。その箱の中から、彼は高さ1メートルくらいの小さなクリスマスツリーを引っぱりだしました。
 実はこれは、平次が商店街の福引きでたまたま当てたもので、それを当てなかったらクリスマスパーティーをやろうなどと彼が考えるはずもなかったのですが、そのおかげで、私の中に変な期待が生まれてしまいました。
 とにもかくにも、平次が“私と”クリスマスパーティーをやろうと思い立ってくれた。それが妙に嬉しかったために、私はそれから、「今年も平次がクリスマスパーティーやりに来てくれるかも」などという期待を膨らませてしまって、毎年12月の24日と25日は、何も予定を入れずに家で待つようになってしまったのです。
 しかしやはり、クリスマスなんてものは興味がないらしく、しかも、たとえクリスマスパーティーをやっていたとしても、事件発生の呼び出し電話なんて来ようものならすぐに飛んでいってそのままパーティーのことを忘れてしまうに違いない平次が、「クリスマスパーティーやらへん?」なんて来てくれるはずもなく、毎年ひとり寂しいクリスマスを過ごす羽目になってしまう私。
 だったら待つのなんてやめて友達とクリスマスパーティーをすればいいのに、一度抱いてしまった期待はなかなか消えないもので・・・。
 しかも今年は、やっかいなおまけまで付いていて・・・。
「平次くん、起きなや、先生見てんで」
 それは、平次を隔てて反対側の席に座っている女の子。実は、3ヶ月くらい前、平次に彼女が出来てしまったのです。それがこの女の子。席が並んでるから、仲のいいところが嫌でも目に付いてしまうし、しかも可愛い・・・!!なんだか、東京にいる友達の蘭ちゃんに似てる気がする・・・。だから憎めないんだよね・・・。
 と、いうわけで、今年は彼女までいる平次が、私のところに来てくれるはずがないと言う訳なのです。なのに今年も言ってしまいました。「ごめんな。その日、別の予定が入ってんのや」って・・・。つくづくアホな私。
 気付いたら、私は彼女の方をじっと見つめていたようで、彼女も私の方を見つめて困惑しているようでした。慌てて彼女から視線を逸らすと、今度は机の上に置いてあった教科書を落としてしまったりして、目を覚ました平次には「挙動不審」とか言われるし、なんだかついてないなぁ。

 そして、クリスマスイヴがやってきました。私はひとり、ソファにうずくまって沈没中・・・。母は近所のおばちゃん達と買い物、父は仕事。だから私はひとりぼっちで惨めなクリスマスイヴ。そして今頃平次は・・・。
「はぁ・・・。なんで私の気持ちには気付いてくれへんのやろな・・・」
 たいして努力をしたわけでもないくせに、ひとりで呟いてみる。呟いたつもりなのに、その声が部屋中に響いたりするから、余計に悲しくなったり。
 いつの間にか、窓の外では、雪がちらちらと舞っていました。
 ホワイトクリスマスかぁ。ええなぁ。恋人同士やったら絶対いい雰囲気になるんやろなぁ。・・・なんて考えていると、突然玄関のベルが鳴りました。そして、私がドアを開ける前に勢いよく外からドアを開けたのは、両手に紙袋を抱えた平次だったのです。
「和葉、一緒にクリスマスパーティーやらへん?」
 私はびっくりしてしまいました。だって平次は、彼女と・・・。
「なんで?だってあんた・・・」
「あ、えっと、まあええから。・・・うぅ、さぶ。急に雪降って来よるからなぁ。入るで」
 平次は私が何か言う暇も与えず、ずかずかと家の中に入ると、持ってきた紙袋の中身を開け始めました。
「ええと、これがケーキやろ・・・、そんでこれがシャンパンで・・・」
 私は混乱してしばらく玄関の前に突っ立っていたけど、やっとの事で我に返りました。
「ちょっと待ってやあんた。彼女とデートとちゃうの?なんでこんなとこ来てんの。彼女は・・・?」
 すると平次は、紙袋の中身を開けながら何事もないように言いました。
「ふられた」
「・・・は?」
「ふられたの」
「はぁ!?」
「だからぁ、何遍も言わすなや!ふられたの!!」
 私は一瞬、訳が分からずにじっと平次を見つめていましたが、そのうちおかしくなって思わず笑い出してしまいました。
「お、お前なぁ、何笑ろとんねん!」
「だって、今日クリスマスイヴやで。そんな日にふられるなんて、平次らしーい」
「俺らしいって・・・。人がケーキとごちそう持ってわざわざ来たったのにそういうこと言うなや。帰るぞ」
 それでも私は笑いが止まりませんでした。ふられた平次が私のところに来たことが、嬉しかったのかも知れません。ホントは慰めて欲しいくせに、平然としてたりするところも平次らしいし。
「でも、何でふられたん?仲良さそうやったやんあんたら」
「何や俺にもよう分からんわ。『私なんかより、平次くんのこと想ってる子がいるから、その子にはかなわない』って言われた・・・」
「え・・・」
 それって私のことなのかなぁ。自分では分からないんだけど、私って分かりやすい性格らしいのです。友達に、「あんたって服部くんのこと好きなんやろ」と言われて慌てることがしょっちゅうあり・・・。気付かないのは平次本人だけみたいです・・・。
 目の前で本気で落ち込んでいる平次がなんだか可愛く見えて、私は、「しゃあないから慰めたるわ」と言ってお皿やグラスを用意すると、「可愛そうにねぇ。彼女のためにこんなにごちそう用意したのにねぇ」と、ちょっとからかって言ってみました。
「うわぁ、きっつぅ。余計に落ち込むわ・・・」
 そう言って溜め息をついている平次の横顔を見つめていると、ふと、平次のそばにあった小さな包みに気付きました。
「あ、これってまさか彼女へのプレゼント?」
「あ、ちょい待て。それは・・・」
 平次が何か言う前に、私はその包みを取ると包装紙を開けてみました。中には、ピンク色のリップスティックが入っていました。
「うわぁ。平次らしくなーい。こんなん買って、なんかやらしいこと考えてたんやろ」
「アホ。そんなん考えてへんわ。返せ!」
 そう言ってリップスティックを私の手から取ろうとする平次を交わすと、私は鏡の前でそれを自分の唇に塗ってみました。
「もう塗っちゃったもんねー。これ私もらったで」
「あ、お前なぁ!!」
 怒っている平次に「メリークリスマス」と囁くと、私は平次の頬にピンク色に輝くキスマークを付けました。
「それ、“来年のクリスマスも予約済み”っちゅう印やから」
 ぽかんと口を開けて立ちつくす平次をしり目に、彼の買ってきたシャンパンを鼻歌を歌いながらグラスに注ぐ、私なのでした。





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まとめ
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